BLACK TRAP ~あの月に誓った日~
Ⅳ 交換条件



私と美愛(みあ)は2年に、藤川や咲都(さきと)は3年に無事進級した。

桜の時期が過ぎ、紫陽花が咲く季節が近づいた頃。

体育祭代わりの球技大会が終わり、夏休み前に行われる文化祭の準備が始まっていた。


「なーなーせー~~~っ」


早朝の眠い時間。廊下のずいぶん向こうから、涙声の美愛がすごい勢いで走り込んできた。


「七瀬、ちょっと聞いてよ」


はあはあ、と息を切らしながら、美愛が泣きついてくる。


「何、どうしたの?」


「私の好きな人がね、……」


そう言ったっきり、子どもみたいにボロボロと涙をこぼす美愛。


「女の子と仲良さそうにデートしてたの……!」

「へー……それはショックだね」

「七瀬ひどい、棒読み!」


ワンワン泣く美愛をどうにかなだめ、背中をさする。


好きな人のために、こんなに泣ける美愛が羨ましい。

例えば藤川が誰かとデートしていたら、私は泣けるのかな、と疑問に思う。


「あの子、どういう関係なんだろう……すごいお似合いだった……」

「それなら、彼の様子を見に行こう。私も一緒に付き添うから」


あまりにも可哀想な美愛のため、一つ提案してみると。

美愛はキラキラと目を輝かし始めた。


「ほんとにー? 七瀬、大好き!」

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