クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
路頭に迷った街中で
ついさっきまで働いていた場所から、にぎやかな街中へとふらふらとした足取りで出向いた。
今日は俗に言う華の金曜日、時刻はもうすぐ二十四時を迎える。
顔を赤くしてできあがっているスーツやオフィスカジュアル姿のサラリーマンやOLのグループの姿が目立っていた。
終電はさっき過ぎてしまったため、今からはタクシーで帰路につくのか、はたまた二次会へとうつるのかはわたしには知る由もない。
本当ならばわたしも……あの人たちみたいに同僚と呼べる仲間たちと楽しくお酒を交わしていたのであろうか。
そう思うと暗い気持ちが胸を包んだが、そんなことを考えている暇はないし、そもそも今さらすぎて話にならない。
わたし、成田香乃(なりたかの)は一人で色づいた街中を10分ほど歩き目的地である24時間営業のネットカフェの前で足を止めた。
【1時間200円!!】とかかれた看板を見上げる。
ホテルに泊まるお金はもったいないし、ここで十分だ。
身分証明書さえあれば大丈夫だよね、運転免許証や保険証は財布にいれているから……と念のためグレーの鞄のなかに目をやった。
「………え……?」
自然と声が漏れた。
その口調は“いやいやそんなはずは”とまだなにも疑ってはいない。
だが、今上から覗く限りでは一目惚れして一年前に奮発して購入したシャルトルブルーの長財布が視界に映らないのだ。
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