クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
わたしが昨日まで住んでいたアパートは小さな個室にお風呂とトイレ、洗面台も一緒に備え付けられていた。
その個室の2倍はある脱衣場。だれか隠れているんじゃないかなんておかしな想像までしてしまう。
実家のバスタブも、少し足を曲げなければならなかった。
だからわたしがお風呂で全身を伸ばせられたのは温泉に行ったときぐらいだった。
最後に温泉に行ったのは冬だから……それ以来の思う存分手足を伸ばしてのバスタイムとなった。
本当はもうすこし浸かっていたいけれど……自分の立場で長湯するのはあり得ないと思い急いで湯船を後にした。
脱衣場に出て、棚に置かれている綺麗に畳まれた見るからに清潔そうなタオルに手を伸ばした。
その白いタオルはフワフカで、本当に高級ホテルに来てるんじゃないかと錯覚を起こすほどだった。
わたしは迷っていた。
さっきまで着ていた下着や洋服をもう一度身につけてよいのか、と。
どうしよう……わたしからしたらやむ終えないから仕方ないと思えるけれど、あの人からしたら汚いと嫌がるかも……そう思われたら嫌だな……。
というか……なにも身に付けないのが正解……なのかも。
あの人はわたしの事情どころか名前さえ聞かず真っ先にお風呂に入るよう進めてきた。
それってやっぱり、そういう意味……?
そうだ、きっとそうにちがいない。
じゃなきゃおかしいよ、あんなふうにずっと優しく手を繋いでくれたことが、ただの親切心だけなわけない……。
迷っている暇はなく意を決したわたしはバスタオルを胸が隠れる位置で全裸に巻き付けた。