クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
あまり大きくないバスタオルのため太ももの真ん中から素足が露になる。
フェイスタオルで濡れた焦げ茶色のロングヘアーを雫が垂れなくなるまでワシャワシャと拭った。
あんまり待たせると機嫌を損ねるかもしれないと思い、まだ湿ってはいる髪の毛を手ぐしで軽く整えこの脱衣場から出る準備が整った。と同時にどくんどくんと心臓が少しずつ速まるのを感じた。
覚悟よ、香乃。覚悟を決めるのよ……!
あんな高身長イケメン、しかもおそらくハイスペックな人に出会えるなんてきっとこの先ない。
この機会にバージンを卒業するという、わたしにとってもいい話と思おう……!!
今年で26歳になる。この年で処女というのは多少のコンプレックスを感じていた。
よ、よし……!
つばをゴクンと飲み込んで意気込み、タオルをきつく巻き直してから脱衣場の扉をカラカラと開けた……。
先ほど男性が消えていった場所の明かりがついている。
ソロソロとほこりひとつないフローリングを歩き進めると……ソファに座って手帳らしきB6サイズのノートを眺めている彼の姿を見つけた。
「あ、あの……お待たせいたしました……」
勇気を出して喉の奥から声を絞り出す。
現在のドキドキは、恐怖ではなくて緊張がほとんどだった。