クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「うそでしょ………っ」
うそ。絶対うそ。これはなにかの間違いよ。
どうせ底のほう隠れているんでしょう……!?
まだ消えてはいない希望を胸に鞄の底という底をあさる。
しまいには地面に鞄を置き、中身を一度全部出してまで確認してしまった。
ダブル……いや、トリプルチェックにも関わらず愛しのシャルトルブルーは姿を現してくれなかった。
信じられなくて、立たされた極致に頭が真っ白になる。
財布はたしかに鞄のなかにいれた。
それは間違いなく覚えている。
置き忘れた?落とした?まさか、盗まれた!?
「……っあ!」
ひとつ思い当たる節をなんとか思い出し、思わず大きな声をあげた。
おそらくあのときだ!
ひらめいたと同時にベージュのヒールパンプスを履いている足は来た道のりを一目散に引き返していた。
街中へ入る手前のところで、横道から急に自転車がものすごいスピードで出てきてぶつかりそうになったのだ。
潜在能力なのかオリンピックの卓球選手並の反射神経で間一髪のところでぶつからなかったのはいいものの、わたしは思い切りバランスを崩しすってんころりんと見事に尻餅をついてしまった。