クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「うん、美味い」
サンドイッチを飲み込んだあとの第一声に、なんだかすごくうれしくて「よかったです」と笑みがこぼれた。
だけれど、こんなんじゃお礼にはならないし……どうやってお礼しようか。
なにか好きなものを買うとか……だよね。
今のうちに聞いておこう、と口を開こうとしたら。
「どこに引っ越すんだ?」
彼のほうから先に、質問されてしまった。
しかも、それはわたしが困る内容で胸がどきりと響く。
いくらでも嘘はつけるが……ここまで親切にしてもらって真実を明かさないのはとても失礼だと思い、正直に話すことを心に決めた。
途端に口が乾いてきて、ウーロン茶で潤してから、「実は……」と話し始めた。
「……わたし、地元の歯科衛生士学校を卒業して、都会に憧れてこの土地で就職したんです。でも、就職先でいろいろあって……一年で辞めてしまいました。……それから衛生士として働くのが怖くなって、歯科医院以外のアルバイトを転々としていて……気づけば三年が経っていました」
始めてこれまでのいきさつを人に話す。
どう思われるかわからないけれど……決してよく思われないことはわかっているけれど、栂野さんならちゃんと聞いてくれるんじゃないかと思った。
彼は先ほどから真剣な眼差しを向けてくれているため、安心して話を続けることができた。