クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
面接の日
「顔が既に緊張しているな」
月曜日の朝、時刻は八時三十分。
カジュアルスーツを身にまとった直生先生は、リクルートスーツ姿のわたしにふっと小さく笑いかけた。
「安心しろ。うちのスタッフはいい人ばかりだ。父である院長は優しいし、受付をしている母もおっとりしたタイプだ」
「そうなんですね……!少し安心しました」
今日は、九時から面接に行くのだ。
もう入ることは決まってはいるのだが。
直生先生が、院長と夫人には話しを通していると言っていた。
わたしはまだ下ろしたままのセミロングヘアを黒いゴムでひとつにまとめはじめた。
「そろそろ出ますね」
「もう行くのか」
「一応JR一本はやいので行きます」
「そうか」
わたしと直生先生が同居していることはさすがに医院の人たちには言えないため、わたしたちは今後も別々に向かうのだ。
直生先生は車だ。
「……な、なんでしょうか?」
髪をくくり終わるとなぜだかじっと見つめられ、無駄にドキドキする。
「……いや、結ぶとまた雰囲気変わるなと思ってな」
金曜日の夜に彼に拾われてから、たしかに今この瞬間まで一度も髪を結んだことはなかった。