クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
“また”と言うのは、実は昨日美容院に行かせてもらったのだ。
胸が隠れるくらいまであったらロングヘアを、胸の上のセミロングの長さまで切り、プリン頭だったカラーをむら無くカラーリング。
直生先生が言うことは拒否してはいけないため、わたしは素直にお言葉に甘えた。
家に帰ると、『似合ってる』と言われ胸がくすぐったくなったのを思い出す。
今は雰囲気が変わると言われただけなのに、また、そんな感覚が胸を泳ぐ。
「そ、そうですか?こんなきっちり結んでると、学生に戻ったみたいです」
「学生は前髪もきっちり留めてるな」
「そういえばそうでした」
あの頃は眉毛が見えるようにピンで留めていたが、今は目にかからないように軽く巻いて横に流している。
「それでは行ってきます」
まだなんだか慣れないもらった鍵を使い、タワーマンションをあとにして歩いて5分の最寄り駅へと向かった。
医院まで一駅だけであるし、駅から歩いて三分のため到着はすぐだった。
時刻はまだ八時四十五分だ。
十五分前はちょっと早すぎるよね、と思い少し離れたところで待機する。
ふう……。見学だけなのに、緊張してきた。
まさか、また歯科医院で働く日が来るなんて。
昨日の日曜日は、直生先生はやらなければならない仕事があるようで書斎にこもっていた。
どうやら仕事関係の書類はすべて書斎に置いているようだった。だって、書斎以外には彼が歯医者と示すものはなにも置かれていないからだ。
洗面台のところに、歯科医院で使用されている歯ブラシやフロス、歯磨剤が置かれていることには後から気がついた。