クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「成田香乃と申します。よろしくお願い致します」
応接室に入ると、直生先生と同じ格好で髪をグレーに染めた優しそうな顔つきをした院長が座って待っていた。
「そんなかしこまらないで、座って座って」
院長も夫人もとてもウェルカムといった雰囲気だ。
「失礼します」と笑みを浮かべて腰かけた。
「直生から話しは聞いているよ。衛生士が一人やめてね、それは前々からわかっていたから求人を出していたんだがだれも来なかったからすごく助かるよ」
こんな偶然、本当にあるんだと思った。
でもあの日、直生先生は素性もわからないわたしを家に泊めてくれた。
一人ぼっちだったわたしに希望の光を差し伸べてくれた恩人だ。
だから直生先生のためにここで頑張りたい。
そして自分のためにも。
だけど、すぐ戦力にはなれないと思う。
「……わたし、臨床の経験は一年しかない上に、三年間のブランクがあります。なのでたくさんご迷惑をおかけするかもしれません。ですが、精一杯頑張りますのでよろしくお願い致します!」
思わずぐっと手に力がこもった。
言いながら泣きそうにもなってしまった。
そんなわたしを見て、ふたりは穏やかな笑みを浮かべた。