クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
さっきは後ろ姿だったが、今度はちゃんと真正面の彼。
スクラブ姿がとてもよく似合っている。
「はいっ、ほんとに!頑張れそうです!!」
あのお二人の息子だから、直生先生もこんなに優しく育ったのだと思った。
「それならよかった。気をつけて帰れよ。……そういえば免許センターに行くんだったか」
応接室の扉に手をかける前に、思い出したように言った。
「あ、はい。行ってきます!」
土曜日に、アパートに向かう前に交番へ財布を落としたことを届け出に行った。
だがもう見つかる可能性は低いと思うので、今日運転免許センターに再発行の手続きをしに行くのだ。
わたしは車を持っていないがこの先もしものときがあったら困るし、顔つきの身分証明書は持っておいたほうがいい。パスポートを持ち歩くわけにはいかないし。
保険証は、この医院が健康保険組合に手続きしてくれるから問題ない。
「……あの、直生先生」
先生がこの部屋の扉を開けてしまう前に、少し小さめの声で話しかけた。
「なんだ」
「……今日は夜ご飯、なにがいいですか……?」
聞いたあとに後悔した。
わたしの立場で、こんな場所でこんな話、するもんじゃなかった。