クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「──の、香乃」
心地のいい声が睡眠中のわたしの耳に届く。
軽く肩を揺さぶられ、瞳を開けたと同時に勢いよく頭を上げた。
「起きたか」
「な、直生先生……っ!」
時刻は十九時三十分。
わたしはどうやら眠ってしまっていたようだ。
先生に寝顔を見られたことがかなり恥ずかしい。
絶対不細工だったにちがいない。
「勉強してたのか」
ついさっきまでわたしの腕と頭の下敷きになっていた教科書やノートに目をやった。
「略語とか術式とか器具とか……記憶からほとんど抜けててこれはまずいなと思って」
最低限のことは知っておかないと、恥をかくのは自分だ。
三年間のブランクを、はやく乗り越えなければ……!
「えらいな」
優しい笑みを浮かべて、イスに座ったままのわたしの頭を大きな手のひらで撫でた。
わたしを見下ろす柔らかい瞳と、手のひらのぬくもりに胸がどぎまぎしだす。
褒められてすごく顔がにやけちゃいそう。
でも、そんな顔恥ずかしくて見せられない。
だって、ただ照れてるだけじゃなくて、まちがいなくにやにやしてしまうから。