クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
「おーおー、泣いちゃってえ。彼氏にフラれたの~?」
ろれつがままなっていなく発せられる口からはひどいアルコールの匂いがして、思わずうっと顔を背けた。
「いえ、大丈夫です……っ」
酔っぱらいに絡まれるなんて、とことんついてない。
とにかくこの街中を出てだれにも絡まれなさそうな比較的安全な公園にでも向かおうと顔だけではなく背も向けると、がしっと思い切り手首を捕まれ、瞬間、背筋が凍る。
「大丈夫じゃないでしょお。一人で困ってるんだよねえ?おじさんの家に来ない~?」
この小太りの酔っぱらいのどこにそんな強い力があるのか、ぐいぐいと引っ張られ振りほどけない。
「や、めてください……っ」
「そんな怖がらないでよ、乱暴しないからさあ。おじさんの相手してくれたらお礼だってするよ~?」
「はな、して……ッ」
恐怖で喉が詰まり震えた声で抵抗するも、なにも効果はない。
なにもかも最悪だ。
わたしにはこんな道しか残されていないのか。
自分自身を売る道しか、残されていないのか。
いくら路頭に迷っているからといって、そんなの絶対に嫌──!
「おい、探したぞ」
低く、静かな声が後ろからわたしの耳にすっと飛び込んできた。