クールなイケメンドクターに拾われましたが溺愛されるなんて聞いてません!
街中を出るとわたしたちを照らしてくれるのは街灯とほとんど通らない車のライトだけだった。
真夜中の風邪は冷たくて、何度かくしゃみをしてしまった。
五分ほど歩いたところにあったコンビニに一度立ち寄り、彼はなにかを買っていた。
そしてまた五分ほど足を進めたとき……「歩かせてわるかったな」木々に囲まれたタワーマンションのエントランスへと入っていった。
言葉も出ず首も振れず、なにも反応できなかった。
……なに、ここ。
わたしがこれまで安アパートに住んでいたから免疫がないのはもちろんだけれど、そうでなくてもきっと初めて入った人は必ず驚く。
まるでホテルのような豪華な内装に目をパチクリさせる。
平均以上……の、そのまた上。
……この人、いったい何者……?
安アパートとは天と地の差で、この場は自分には不釣り合いすぎてそわそわする。
そんなわたしをよそに、“いつものルート”のようにエレベーターの前までやってきて慣れた手つきでボタンを押す。
すぐにやってきたエレベーターのなかでも目を丸くして呆気にとられた。
ご……っ50階立て!?そんな建物あるの!?
男性は45階のボタンを押していた。
つくづく驚きながらも、未だ離れない彼の右手に胸のくすぐったさを感じていた。
繋いだ手が解かれたのは、455号室の扉の前に到着したときだった。
胸元のポケットに入れている革のキーケース。
ガチャリと音を当てて解錠された。
「……ん、入って」
「お、お邪魔します……」