アブナイ王子様たち
すぐに足を引っ込めたのは、私がお金持ちの家に生まれて、叔母さんが体験したようなことをしていないからだろう。


でも、我慢するんだ。


私には、叔母さんの家に泊まるという選択肢しかないのだ。


叔母さんの家まで来て荷物を運んでおいて「帰ります」なんて言えるわけがない。


もし「帰ります」と叔母さんに伝えたら、私は今夜過ごす場所をひとりで探さなければならない。


叔母さんに余計な心配をかけてしまう。


心の中でそうつぶやきながら、握り拳をギュッと作り、力を入れた。


しばらく切っていない爪が皮膚に食い込み、チクッと刺さるような痛みが走る。
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