アブナイ王子様たち
心の中でそうつぶやきながら、コップに入れておいた水を使って、口をゆすぐ。


歯磨きをし終え、そそくさと洗面所をあとにしようとする。


しかし……。


「待って」


うしろから、匠くんの声が聞こえてきた。


ピタッと足を止め、うしろを振り向く。


「な、なに……?」


なんで『待って』って言ったんだろう。


さっき私に、ちょっとぶっきらぼうな言葉を言い放ったのに。


言動が矛盾しているというか……。


「愛海、夕飯の時間に、気味の悪い手紙が届いたって話したじゃん」


「う、うん、話したね」


ちょっとドキッとしてしまった。


匠くんが、私のことを“愛海”と、呼び捨てで呼んでいると意識しているからだろう。


そのドキドキで、心の中で支配していた疑問が吹き飛んだ。
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