アブナイ王子様たち
体が動かない。


目も開けられない。


だんだん力が抜けていく。


それでも、なんとか足に力を入れて、姿勢をキープする。


その数秒後、ストーカーのあきらめたような声が聞こえた。


「ちっ……追って損した。


まさか愛海ちゃんが、俺以外の男とキスしていたなんて……。


ここにいても、なんもいいことねぇ。


帰るか……」


その声と同時に、近くにあった足音が遠ざかっていくのがわかった。


ストーカーは帰ったらしい。


けれど、キスが中断したのは、足音が遠ざかってから十数秒ほど経過したときだった。


私の唇をふさいでいた唇が再び離れ、また名残惜しさを感じる。


なんで……なんで名残惜しさを感じるんだろう。


疑問を抱く私をスルーして、翔さんが私の耳もとでささやいた。


「もう目を開けてもいいぞ」
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