アブナイ王子様たち
言わないで正解だった。


そう思ったのは、翔さんのこの言葉を聞いてからだった。


「ま、いいけど。


ストーカーを追い払うことには成功したし」


そうだよ。


ストーカーをあきらめさせたことに変わりはないんだから、それでよしとしよう。


「さ、目的は達成したし、帰るか」


「……はい」


階段を下りて、出入り口に向かう翔さんの背中を追いかける。


ショッピングモールを出て家に着くまでは、とくにこれといった会話をしなかった。


もっとキスしてほしかったことを隠すためだ。


翔さんの唇が離れて、名残惜しく感じた。


そっと、自分の唇を、指先で触れる。


キスされた感触がまだ残っている。


それに、胸のドキドキが止まらない。


これは、恋というものなのでしょうか……。
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