アブナイ王子様たち
だが、口移しのことで頭がいっぱいになり、なかなか眠れない。


あー、ドキドキが止まらない!


心臓め、早くドキドキを止めてよ!


心の中で、自分の心臓に向かって叫ぶが、当然心臓には届かない。


うー、こうなったら目をつぶり続けるしかない!


と思っていると。


「……おやすみ。


早くよくなれよ」


私の耳もとで、翔さんの声が聞こえた。


いつもの意地悪な口調とは違う、優しい声音。


その言葉にドキッとした直後。


チュッ。


唇になにかやわらかいものが軽く触れる感覚に襲われた。


い、今の……。


「じゃあな」


ガチャッ、バタン。


翔さんが出ていったあと、目を開けた。


い、今の……キス……?


翔さん……本当に私のことが……。


信じてもいいのかな。


それはわからないけど、わかったことがひとつあった。


それは、翔さんのことが本当に好きなんだということ……。
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