アブナイ王子様たち
ガクッと膝から崩れ落ち、体全体を震わせる紀野くん。


その目には、涙が浮かんでいる。


「自分のものにしようとこの女を拘束しただけで、この女がお前のことを好きって言うわけないだろ」


「……っ」


「お前、頭の中身、幼稚園児以下かよ。


いくら、自分が恵まれてるからって、人の心まで思いどおりにはならないんだぞ」


たしかに。


世の中、うまくいかないことはある。


どんなに頑張ったって、思いどおりにいかないこともあるんだ。


……って、あれ?


翔さん、今なんて言った?


『いくら、自分が恵まれてるからって』


紀野くんが恵まれた環境で育ったって、どうして思ったんだろう。


翔さんは、紀野くんのことを知らないはず。
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