我が儘社長と不器用な2回目の恋を
斎が連れていってくれたのは、今日一人でご飯を食べた空き教室だった。
たくさんの部屋があるのに、同じ場所なった事に、夕映は更に悲しくなってしまう。
この場所が悲しい思い出がある場所になりそうだと思った。
「どうしたんだ。さっきから泣きそうな顔をして。」
「…………。」
「夕映。話があるんだろう?」
斎と夕映は向かい合ったまま、手を繋いでいた。日が沈みそうな時間。ぼんやりと夕焼けの光で照らされた教室。
斎は優しく夕映にそう問いかけた。
夕映は繋いだ手をギュッと握りしめた。
「………今日の朝、部室で南ちゃんと話してたでしょ?」
「おまえ………。知ってたのか。だから………。」
「どうして、嫌いなんて言ったの?近寄らないでって………どうして、そんな酷いことを南ちゃんに言ってしまったの?」
「………夕映、おまえどこからその話し聞いてたんだ?」
「それだけだよ!でも、南ちゃんが告白しに行ったのは知ってる。それなのに、どうして嫌いなんて言うの?………正直、斎が自分を選んでくれて、南ちゃんを断ってくれたのは嬉しかった。………でも、そんな言い方おかしいよっ!」
「…………。」
気持ちが溢れ出てしまった。
我慢していたものが出てしまうと、それを止めることは出来ずに、斎に言葉をぶつけてしまった。
南が告白したことを夕映が知っている事に、斎は驚いた様子だった。
けれど、夕映が問い詰めれば問い詰めるほど、斎の顔は冷静になっていき、最後には彼が怒っているのがわかった。
けれど、その中に悲しげな雰囲気があり、夕映は少し戸惑ってしまう。
「………南から言われたことに対しての、俺の返事だ。そして、俺の正直な気持ちを伝えただけだ。」