我が儘社長と不器用な2回目の恋を
夕映は、南が斎に告白した後の会話を聞いてしまった事をもちろん話してはいなかった。
けれど、いつも一緒にいた夕映と斎が全く話さなくなり、そして大学生活最後の方はほとんど部活に顔を出さなくなった。
そして、夕映は依央と付き合った。
話をしなくても誰でもわかることだ。
南は気にして聞いてこなかったのかもしれないけれど、彼女だってわかっていた事のはずだ。
少し考えればわかる事。夕映だってわかっていたけれど、南の優しさに甘えていたのだろう。
「……今まで聞かなかったけど、夕映ちゃんは斎くんを大好きなのにどうして告白したり、また恋人になったりしないの?斎くんだって、まだ夕映ちゃんが好きなんだって、この間の飲み会で見たときにすぐにわかったんだよ。………あんな優しい笑顔、私にはくれたことなかった。」
「南ちゃん、私は別に……。」
「好きじゃないの?」
「それは………。」
南の真剣な瞳、そして問いかけに夕映はたじろんでしまう。
斎の事が好きじゃない?
………そんなわけはない。
だって、こんなにも彼の事で悩んでる。付き合えないと言わなきゃいけないのに、ずっと逃げているのだ。彼との関係を終わりたくないと、最後の繋がりを必死に掴んでるのだ。それがなくなってしまったら、もう会えないとわかっているから。
それなのに、好きだと言えない。
自分の気持ちがわからなくて。
誰にも相談出来ない事がとても辛かった。
南と斎の話しを聞いたことを黙っていたのは、自分だ。
彼女に聞けばわかるのだ。
夕映は必死に我慢していた事を彼女に問いかけようと決めた。
彼女の気持ち、そして斎の気持ちを知るために。
そして、斎と一緒にいたいという願いを叶えるために。