我が儘社長と不器用な2回目の恋を
そんな物思いにふけった後。
夕映は、自宅で仕事をしていた。夕映の職業は翻訳家。外国語が好きで、子どもの頃から遊びながら学んでいたため、語学は達者だった。
それに、昔の彼の影響もあるのだ。
そう思うと、今の自分は全て彼で出来ているのではないかと思ってしまうぐらいだった。
パソコンでカタカタと英文を日本語に訳していく。今回は若者向けの小説なので、読みやすいように、話し言葉に近い文章に直していった。
翻訳家になったのは、洋画や洋書で勉強していたので、自分もそういう人達が学ぶのに役だちたかったからだ。
夕映は、有名映画の翻訳をする事だった。
まだまだその夢は叶うことはなかったけれど、今の仕事が楽しくて仕方がなかった。
自宅で出来る仕事となると、起きる時間や休む時間も自由なため不規則な生活になりがちだと言われるが、夕映も少しそれに当てはまっていた。
休憩の時間をほとんどせずに1日中仕事をしてしまう事が多々あるのだった。
今日は、世間では休日だったけれど、夕映には関係なかった。
恋人が別れを告げに来た後も、普通に仕事をしていた。自分でも「悲しいとも感じないなんて、酷い人だ。」なんて思ってもいたけれど、仕事を始めれば忘れてしまう事が出来た。
そんな、夕映だったけれど、今日は仕事だけの予定ではなかった。
昼過ぎにアラームがなった。
「あ、そろそろ時間だな………。」
1人暮らし特有の独り言を呟いた後、パソコンの電源を切って、出掛ける準備をした。
カールが掛かった茶色の長い髪を頭の上の方で結びポニーテールにする。
メイクも直した後、着替えや使うものを準備した後、近くのスポーツジムに向かった。
そのジムでは、外でテニスやバスケット、サッカーが出来る施設でもあり、夕映は歩いてそこのテニスコートへと向かった。
少人数限定のテニススクールに通っているのだ。
夕映は、中学の頃からテニスをしており、部活では全国でも入賞したことがあるほどの腕前だった。
大学生のサークルまで続けており、その後社会人になってやらなくなるのは寂しくなり、社会人2年目ぐらいからこのテニススクールにお世話になっていた。
子ども向けや初心者、シニアなど、いろいろなコースがあるけれど、夕映は何故か選手向けのコースに入っていたのだ。
初心者でも中級者でも、コーチに勿体ないと言われてしまい、プロになるつもりもないのに、選手コースに入会していた。
そのため、数人しかおらず、いろいろ教えてもらったり試合を沢山出来るのは良かった事かもしれない。