我が儘社長と不器用な2回目の恋を
「斎様。おかえりなさいませ。……そちらにいらっしゃるのは、夕映様ですか?」
「神楽、急に来て悪かったな。」
「神楽さん。お久しぶりです。」
夕映は、小柄で細身の50代ぐらいの男性を見つけてすぐに近づいた。彼は、斎の実家の使用人の一人で、大学の頃によくお世話になっていたのだ。いつも笑顔で優しく迎えてくれる神楽が、夕映は素敵だなと思っていた。
そんな彼に会えたのが嬉しくて、思わず笑顔になってしまう。
「夕映様。ますます綺麗になられて。九条夫妻は夕映様に会えなくなって寂しくなされていましたよ。」
「ごめんなさい。でも、こうして神楽さんにまた会えて嬉しいわ。」
「私もです。今日はゆっくりして行ってください。」
「ありがとう。」
数年ぶりに会っても優しくしてくれる神楽と話をしているだけで、当時の事を思い出してしまう。ほんわかとした気持ちになりながら、神楽と話をしていると、斎が神楽に声を掛けた。
「神楽。こいつの服ってまだあるだろ?俺の部屋にあるはずだから持ってきてくれないか。」
「え……。」
「かしこまりました。どのようなお洋服でしょうか?」
「テニスウェアだ。」
「かしこまりました。」
深く頭を下げてから、神楽はすぐに家の中に戻ってしまう。それを目出追いながら、夕映は驚きで斎に何と声を掛けていいのかわからなくなっていた。