我が儘社長と不器用な2回目の恋を



 「ど、どうしたの?斎の綺麗なスーツが汚れちゃうよ?」
 「たまにはこういうのもいいよ。汚れたら綺麗にすればいいんだ。夕映も座れよ。」


 自分の隣の芝をトントンと手のひらで叩いて、ここに座れと促してくる斎。先程、彼に起こしてもらったばかりなのになと思いながらも、彼の気遣いに感謝しながら夕映は隣に座った。


 「あれから、英語は少しは読めるようになったか?」
 「うん!勉強してるよ。まだスラスラとは読めないけど……でも、いつかはいろんな洋書を読んでみたいな。」
 「和訳された物を読んでもいいと思うけどな。でも、まぁ、和訳されたものなんて、ほんの少ししかないんだけどな。」
 「そうなの?」
 「そうだよ。夕映は図書館に行ったことがあるだろ?大型の本屋でもいい。あそこにあるのが全部外国人が書いたものだとする。それが日本語に訳されているのは、ほんの一部しかないんだ。図書館でも、海外の一般図書なんて少ないだろう。」
 「確かにそうだね。」


 斎に洋書というものがあると教えられてから、夕映は図書館で和訳されている本や洋書を見ることが増えていた。両親に意味を聞いたりしながら図書館で過ごす時間がとても楽しみになっていたのだ。
 そのため、斎の話していることの意味がよくわかった。


 「日本なんて小さな国だろ。他の国で作られた本なんて沢山のあるはずなのに、ベストセラーにならないと和訳されないなんて勿体ないよな。きっと良い本は沢山あるはずなのに。」


 口を尖らせながら、斎はそう言い無数に煌めく星を見上げながら呟くように話してくれた。
 斎は本当に本が好きなんだなと、斎の考えを聞いても夕映は思った。そして、他の国に住む人が作った物語も読んでみたいと。

 そう思った時に、ある考えが頭に浮かんだのだ。


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