我が儘社長と不器用な2回目の恋を



 「い、斎…………。」
 「おまえ、無防備すぎ。これなら、いつでもお前にキス出来る。」
 「…………な、何言って……。」
 「どんな男の前でも、おまえはそんな感じなのか?顔を赤らめて緊張しながらも、こうやってすぐ傍にきて、無防備な姿を晒す。どんな奴でもそうなのか?」
 「………違う。これは斎がここに誘ったからっ!」
 「なら、俺だから?」


 斎は真剣な表情で、夕映を見つめ、そしてどんどんと顔を近づけてくる。彼のグリーンの瞳に自分が写っているのがわかるぐらい近い。そして、彼の香水の香りが今までで1番濃くなったのは、もう少しで鼻と鼻が触れそうなぐらいになった時だった。

 いつものいたずらに微笑む表情でも、泣きそうな顔でもない。とてもまっすぐとした瞳で、男らしい顔つきのまま斎は夕映を見ていた。


 「………それは。」
 「俺だからって言えよ。………俺は夕映だから、ここに連れてきた。」
 「………え……。」
 「おまえだから、俺の車に乗せて、そしておまえだからこうやって触れてる。………おまえは、どうなんだ?」
 「斎……私は………。」


 彼の言葉が信じられなかった。
 車に乗せたのは私だから?他の女の人は乗ってないの?
 こうやって近くで見つめあって、頬や唇から彼を感じられるのは私だけ?
 私は彼の特別なの?

 それが、信じられなかった。
 信じられないほど、幸せだった。

 まだ、返事もしていない。彼からはっきり言われたわけでもない。
 それなのに、嬉しさで目が潤んできてしまう。



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