我が儘社長と不器用な2回目の恋を
「おい、夕映。」
「ど、どうしたの?」
気づくと前を歩く斎がこちらを振り返っていた。今は講義室が並ぶ大学の廊下だった。吹き抜けになっており、中庭から夏の風が吹いてきている。
夏の少しじんわり来る風と、クーラーの涼しい風がまざって少しだけぬるい。
それよりも彼の手が暖かくて心地いいな、なんて思ってると、斎が不機嫌そうにこちらをジロリと見ている。
「おまえ、俺と付き合い始めたんだろ?」
「うん……….。そうだね。」
「じゃあ、なんで連絡返さなかったんだよ。学部違うんだから、昼か部活でしか会えないだろ。」
「スマホ見てなくて。それに…………、迷惑かなって思って。」
自分と一緒に居たいと思ってくれているのだと思える言葉は嬉しかった。
けれど、彼がそんな事を言うのは意外だった。
誰かがいる前では、一緒に居るのを見られるのはイヤなのかと思っていたのだ。特にこうやって手を繋ぐなんて、論外だと勝手に思っていた。
けれど、斎はそれを聞いて驚いた顔を見せた。
「なんでだよ。」
「だって、斎は九条の跡取りでしょ?私みたいな小さい会社の社長令嬢と歩いていたなんてバレたら、噂になっちゃうかなって。」
「なんでそうなるんだよ。俺は九条の事なんて考えておまえを選んでない。俺が夕映が好きだから恋人になったんだ。」
「あ、えっ………それはそうかもしれないけど……。」
あまりに突然の告白に、夕映は照れてしまい顔を真っ赤にしてしまった。大学の廊下で斎「好きだから。」なんて言われるなど思っていなかったので、どうしていいかわからず、言葉も出てこなかった。
けれど、斎はそんな様子の夕映には構うことなく、自分の思いを伝え続けていた。
「だから、こうやって大学で手を繋ぐのも、一緒にランチするのだって出来る。それに、こうやって………。」
「え…………。」