好きって言ってよ、ばか。
「……いつもはあたしに気ぃ使ってくれてるのに」


律が好き、なのだ。


親友の好きな人と一緒に住んでいる。

その事実はときどき私の胸を締め付けるけど、優妃は笑ってくれた。

律のことが好きだと言われた時はびっくりして、思わずどもってしまった。
その時までは、優妃にさえ律と同居していることを言えていなかったのだけれど、さすがに隠しているわけにはいかないな、と思って露呈したのだ。
同居の理由と、私の過去も共に。
同時に、律のことは何とも思っていないということも。

絶交とまではいかなくても、もう友達ではなくなってしまうかもしれないとまで考えた。

だけど、隠し事だけはしたくなかった。

そんな勇気のいる決断をした訳だけど、いまは本当に言って良かったと思っている。

驚いた後、涙目の私を見て、微笑んでくれた。
それくらいで明梨の友達をやめる訳ない、と言ってくれた。

それくらい、優妃は優しい。

失いたくない。


「明梨ー?」


はっと我に帰る。

いけない、昔の記憶に引きずり込まれていた。

「、えっと、ね!それはほんっとーにごめん!私が今日寝坊しちゃってさあ、電車乗り過ごしちゃったんだ。律は待っててくれただけなの」

「あははっ、気にしなくていいって!てか待っててくれるとか、律くん優しいなー!」

……たしかに。

先行かせれば良かったなあ。
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