好きって言ってよ、ばか。

『今日はハンバーグがいい。 byりつ』


脱力した。

何だよこれ。
今言うこと!?
夕食が、ってことだよね。
まあ、今日の夕食当番は私だけどさ。


………しょうがないなあ………。


律の後ろ姿を見つめる。

つかみどころがない人。
幼なじみで、ずっと近くにいたのに。
何でも知ってるはずなのにな。


先生がこっちを向いていないことを確認した。
そっとノートを取り出して、音を立てないように千切る。
シャーペンをカチカチとノックする。


私、目立たない壁際の席で良かった。



……律の後ろで、良かった。



律を見てるだけで、安心するよ。


そんなことを考えながら書いた、



『いいよ』。



たった3文字なのに、どこか震えてしまった。

律の字と見比べてみる。
男の子のくせに整った、右上がりの字。

律の字、好きだなぁ。

腕を伸ばして、紙切れをそっと律の机の端に置く。
律がそれを、前を向いたまま掴んだ。

うう、なんか手慣れてるな。
授業中にこういうことするの、常習犯なんだろうか。


さっと紙が帰ってきたので、パッと開く。

私が書いた、いいよ、の下に、


『やったー!^_^』


心臓がきゅうっとした。

なにこれ、こんなの知らないよ……。

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