好きって言ってよ、ばか。
とは言えず、曖昧な笑みを浮かべてみる。

「なんだよ…」

律は少し引き気味に笑うと、私の頭をくしゃくしゃっと撫でた。


「でもまー、無事でよかった」


少しどきっとした。

やっぱ律って、整った顔してるんだなぁ……。


近くにいると分からなくなるもんなんだね。


その時、キーンコーンカーンコーン、とチャイムが鳴った。

「ああ、授業終わっちゃった…」

「今日これが最後の授業だったよな」

そっか、じゃあもう帰っていいんだ。

でもカバンは教室。

そして、クラスのみんなに会いたくない!!
絶対なんか言われるもん!
律と一緒に行こうなんてものなら、もう阿鼻叫喚な気がする。

……優妃にも、会いづらいし…。

そんなことを考えていると、どんどん気分が暗くなってきた。


そんな私の様子を見て、何かを感じ取ったのかは知らないけれど。

「じゃあ、俺荷物取ってくるから」

ガタンと椅子から立ち上がる律。

「今なら多分、クラスの奴ら戻ってきてないだろ」

……あ、多分、そうかな…?


「……ありがとう……」


もはや立場がなくて、俯いたままお礼を言うと、律は走って行ってしまった。
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