好きって言ってよ、ばか。
はっと顔を上げる。

律が、温和な、だけど真面目な顔で私を見つめていた。


「俺たちは家族だよ」


その言葉がふわっと胸に届いて、温かくなった。
たまらずまた下を向いてしまう。

律…。

「ごめん、恥ずかしいこと言った」

再び顔を上げる。
顔を赤くしている律を見て、私まで頰が熱くなった。

「そっ、そこで照れんなよ!」

たまらずツッコむとともに膝蹴りをくらわすと、律が呻いた。

「痛ぅ…馬鹿力……」

「は!?なんだって!?このもやしっ子が!!」

「お、やるか?」

律がにやっと笑う。
口喧嘩で勝ったことはないに等しいけど!
挑んでやる!!

そう決意して息を吸い込むと、鳩時計が鳴いた。
……8回。

2人で顔を見合わせる。

始業式が始まる時間は8時20分。
いつも乗る7時50分の電車は、とうに過ぎ去っていっただろう。


私たちは同時に叫ぶと、お互いを押しのけあいながら外に出た。

「くっそ、遅刻だよ、明梨のせいで!!」

「〜〜否めない〜〜!!ごめん〜〜!!」


こんな日々が、ずっと続くと思っていたよ。

私たちは家族。
だからこそ、こんな風に笑っていられた。
恋愛感情なんて、一欠片もなかったのに。


人生って、本当に何が起きるかわからない。



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