好きって言ってよ、ばか。
……なんだか、思考がスパークしそうだ。

……変な想像しちゃったからだ。


はあ、とため息をつきながら外へと歩を進めると、何か冷たいものが全身に降りかかった。


雨だった。

「っひゃあ!?」

全力で飛び退ると、呆れたような、心配そうな目で私を見ている律と目が合う。

「お前、ほんとに大丈夫…?さっきからやけにぼーっとしてない?」


……もー、半ばあんたのせいなんだけど……。


「大丈夫だけど…、、!か、傘忘れた…」

「はあ?朝持ってなかった?」

「持ってたよ、教室に忘れてきたの!」

「……あー、なんだ、それじゃ俺が悪いんじゃん」

「いや、そんなことはないんだけど……」


律はバツの悪そうな顔になると、頭をかく。


「じゃあ俺取ってこようか…」

そう言って踵を返そうとするので、思わずその袖を掴んでしまった。


「行かないで」


誰もいない生徒玄関で、その声があまりに響いてしまった。

顔に熱が集まるのがわかる。

なんだか、ここで律を行かせたら、彼が私を置いて遠くへ行ってしまう気がした。

ばかだな、


律はそんなことするわけないのに。



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