好きって言ってよ、ばか。
……やばい、なんか変に緊張してきた。


微妙な距離。
時々触れる肩がもどかしい。

律は、そんなこと意識もしてないんだろうか。


「ねえ、明梨」

「え、なに!?」

うわ、すっごい過剰反応しちゃった!


「もっとこっち来て」


ひえ!?

「いや、もう十分近いから……!」

「離れられると傘持ってる方は疲れるんだよ」

「え、ええ……!」


……なんてやってるうちに、駅に着いてしまった。


ふう、と息を吐きながら何気なく律の方を見ると、彼の右肩が、

「うわー、思ったより濡れてた」


そう言ってあどけなく笑うから、私はもう真っ青。


「え、え!ごめん!めっちゃ濡れてるじゃん!!」

「だからもっと寄ってって言ったのに」

「疲れるとか言った!濡れてるなんて言わなかった!」


子供のような言い合いをしながら電車に乗り込む。

幸い帰宅ラッシュの時間帯は避けられたようで、あまり人はいなかった。

空いているスペースに並んで座ると、私はポケットからハンカチを取り出す。

「風邪引いちゃうよ……」

律の腕を拭いていると、彼がふふふと笑いだす。

「明梨、お母さんみたい」

無邪気か。









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