好きって言ってよ、ばか。
「ええっと、これだね」

手に取った。

たしかに、大きく男性用と書いてある。


……男性用……。


今私としゃべっているのは男性で、しかも、は、だかで…

「うわぁもう!!」

なんなのこの状況は!!
私は女子じゃないっての!?

悲しいこと言っちゃうと、私たち血繋がってないからね!?
私はただの居候の女の子なんだよ!?


……もう少しくらい、意識してくれたっていいのに。


そんなこと考えてる私って、我儘ですか?


「何、さっきの声…。分かった?」

「…ん、分かったよ」

努めて明るい声を出した。


細く扉が開いて、濡れた腕が伸びてくる。

ドキッとした。

ちゃんと、男の子の腕だ。
ゴツゴツしてて骨ばってて、でもキレイだなぁと考える。

ガラスの向こうの影が戸惑うように揺れた。

「明梨?どうかした?」

ビクッとする。

「あっ、ごめんなんでもないよ!はいこれ」

律の手に慌てて容器を押し付ける。
それが握り締められたのを確認して、パッと後ろを向いた。


……もう、なんで私だけこんなに緊張しなきゃいけないわけ……。


「ふふ、サンキュー」

無邪気に笑うからさ。


私だって、過剰に反応できないでしょ。
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