好きって言ってよ、ばか。
「はあ…はあ…まに…あった…?」

「間に合ってないよ……」

律が深いため息を吐く。

目の前には見事に閉まった校門があった。

「……ど、どうしよう〜〜!!初日から遅刻とか、絶対イメージ悪いじゃあん!!」

「うるさい静かにしろ……。とりあえず、学校入ろうぜ」

「え?でも門閉まってるよ?」

「ちょっとまってて」

律は門の横の塀に手をつくと、軽やかに身を上げた。
あまりに鮮やかな身のこなしに思わず絶句する。

「・・・私にこれをやれと?」

皮肉をこめて、門の向こう側に降り立った律に問いかける。

無理だよ、私運動神経そんな良くないし。

「無理かあ……じゃ明梨、ちょっと失礼して」

「ちょっわっ!?」

再び塀の上に上がった律が、私の手をぎゅっと握った。

私よりずっと大きい手。
いつのまに……。


「おいで、明梨」


優しい声で呼びかけられ、プイッと顔を背ける。

「…私以外の人にも、気安くこんなことするんだ?」

ってうわ私何言っちゃってんだろ!
可愛くない彼女かよ!!
しかもこれ、答え誘導しちゃってるじゃん……。


「しないよ」


ドキッとした。
してしまった。

……不覚だ!!

「言っとくけどね!他の女の子にこんなことやったら、間違いなく告白されるからね!モテちゃうからね!」

ついつい罵る私を見て、律は笑った。

「分かってるよ。明梨は女子じゃないもんな」

「ちょ、何よそれ」

失礼な奴だな。
まあ、女子として見られても真面目に困るけど。

そんななったら、とてもじゃないけど一つ屋根の下でなんか、暮らせないもん。

私は、この距離感が1番好きだから。




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