好きって言ってよ、ばか。
私はいつもお風呂に入るのは一番後。

律は大抵最初に入っていたから、彼の後に入ることは少なかったのだけれど。

妙に意識してしまう自分が恥ずかしかった。


「上がりましたぁ〜・・・」

よそよそしい態度でリビングに入っていくと。

そこには当然のように律だけ。

「おー」

こっちを横目で見て微笑む律。

さっきのこと、忘れたふりしてくれてるんだろうな。


…優しいなぁ。


「……って、あ!!」


「な、なんだよ」

思わず声を上げてテレビのリモコンに飛びつく。


「律〜!今日は『帰ってきた貞子』があるんだよ!一緒に観よ!」

今は21時55分。
あと5分くらいで始まるはずだ。

目を爛々とさせて律に詰め寄るのだけれど。


「えっ……絶対やだ……」


苦笑いで首を横に振る律。

驚愕。


「なっ、なんでなんで!!一緒に観ようよ!!面白いから!!後悔させないからぁ!!」

ガクガクと律を揺さぶっても、律はそっぽを向いたまま。


「やだ。俺そういうの苦手だから」


……えぇ……?

「あれ、律怖いのダメだったっけ」

「ダメ。全般ダメ。俺お化け屋敷も入れないから」








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