好きって言ってよ、ばか。
全身から冷や汗がぶわっと吹き出した。

ヤバイマズイヤバイマズイヤバイ。


「え……なんで明梨ちゃんと律くんが一緒にいるの…?」

「たまたま会っただけじゃない?」

「いや同時に遅刻してくるっておかしくねー?」

「しかもなんか距離近いし…」


聞こえてるよー!
ヒソヒソ声聞こえちゃってるよーー!!
みんな校長先生の話聞きなさーーーい!!!

訳の分からない思考の中、完全に硬直して動けない私の背中をトンッと押したのは律。
小声で囁かれた。

「早く座れ」

私のクラスの列はすぐ近く。

私は必死に頷くと、自列の後ろに滑り込む。

すると待っていましたとばかりに、すでに後ろを向いていた女の子たちから、食い気味に話しかけられた。

「ちょっと明梨ちゃんどういうこと!?」

「律くんと知り合いなの!?」

うわあもう!!

「いやあ……ハハハ」

作り笑いをするしかできない私に、みんなが不思議そうな、からかうような、嫉妬するような顔をしている。

普段こんなに視線を浴びたことのない私は、完璧にパニック状態で。
設定なんてどこかに吹っ飛んでしまった、その時。


「はい静かに!みなさん、前を向いてください」


校長先生の言葉で、かろうじてみんなが前を向いた。
残念そうな顔をしながら。

火照った顔で俯く。
心臓がバクバクいっていた。





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