【短編】サクラ色の貝殻をきみにあげる
…きみはまるで、海みたいだ。
この空と水面の曖昧な境界線。
宝石を散りばめたみたいにキラキラ反射する光が、私の心にガラス片みたいに刺さって抜けない。
「…サクラ色だ」
浜辺に落ちていたサクラ色の貝殻。
白とピンクの混ざったような貝殻を拾う。
…きみのこと、いつから見ていたのか分からない。
気付いたらいつも視界の端にきみがいた。
だってきみが、へたくそな顔で笑うから。
だってきみが、あまりにも苦しくて、優しいひとだから。
だって、だってきみが
私のことなんて、全然見ていないから。