👑Emperor bride
「どうだい?少しは動くかい?」
「はい、もう前と変わらない
です。
ご心配かけました。」
琴乃はにっこりと笑い。左手を上げ
延ばしして見せた。
深手を負った腕も段々と上がる
ようになり今日は軽々とあがった。
傷は一本線のように段々と
薄くなっていった。カワンは、
張蘭とずっと付き添い
看病をしていた。
琴乃の大ケガを知ってから、
チャンクは毎晩のように
やってきて朝方帰って行く日々を
過ごしている。
昼間は見張りも何人もつけて
見張らせていた。
みせかけは農夫だったり、
客を装ったり
従業員だったり、
と次々に入れ替えながら
まだ狙われてないとは、
言えず用心に
越したことはない。
「張蘭、お勉強は、してる?」
「うん、してるよ。
バアバが見てくれてる。」
バアバは、カワンさんの事だ。
張蘭も、カワンさん、
ヨンスンさんには
少しづつ心を開いてきたらしい。
昔の事を聞くと、あまり喋り
たがらず黙ってしまう事が多く
二人も聞けなかったようだが、
最近は、琴乃が帰って来たから
なのか良く笑うようになった。
まだ九歳だし、辛い過去は思い出
させたく無くて、
皆聞きたいことに蓋をしてきた。
しかし張蘭は、あの戦乱の中
小さな手を引いて走り通した、
エドワードによく似ている
カワンさんの気持ちは焦るが今は
あの時のエドワードのように
心のケアを優先した。
最近クレヨンを買って貰ったと
言う張蘭が絵を書いていた。
「張蘭きれいな人ね!誰」
「ママだょ。」
「ママはネックレスをかけて
るんだよ。」
「こんなの!」
張蘭の書いた絵には見覚えが
あった。それは…
琴乃がチャンクからもらい、
人攫いから奪われたであろう鷹
の羽のネックレスだった。
「こ、これは?」
カワンさんが絵を見て驚いた。
互い羽のネックレス、
それはチャンクの作った物だと
カワンさんは小さな声で呟いた。
それを知っていることに
琴乃もビックリ!!
「これはあの頃殿下の連れてくる
女の子にプレゼントすると言われて、殿下が
一生懸命作られていた物…。」
張蘭の母親があの時の娘?
いやいやエドワードの姉君
なら年が合わぬ。
色々頭で考えると琴乃が凄い事を
言い出した。
「カワンさんこれは私が殿下に
頂いた物です。
これを首にかけた日殿下と別れ
10年が、過ぎました。」
え"ーつ!! カワンとヨンスンは
ビックリして
目を丸くしてお互い絵を持ったままフリーズしていた。
琴乃の裁判に、2人は入れて
もらえずこの事実を知らなか
ったのだ。
「あの毒菓子の毒が効かず
もっと食べたいと、
泣いていた子かい?」
カワンさんは信じられないと
いった顔でジロジロと
今更ながら下から上へと眺めて
「大きくなったねーっ!! 」
そう叫んだ。
プッ「今更ですかーっ。Д」
チャンクはアルフレッドを訪ね
特産品を味見しながら、
アルフレッドの嫁クララの
手料理を堪能していた。
三人衆もエドワードも
感心するほどクララの飯は
旨かった。
チャンクの好きなキッシユ、
ラタトーユ
野菜のトマトハンバーグ
焼きたてのパンもありサラダも
絶品だった。
アルフレッドが、命を投げ出して
までクララには自分の過去を
知られたくない
気持ちが良く解る。