👑Emperor bride


「殿下、もうお休み下さい。
 女は一歩外に出たら、
いっ帰ってくるか
 分かりませんよ。

まあ、ぺちゃくちゃぺちゃくちゃ
 口は止まりません。

 部屋を用意しましたから
 お風呂などユックリされて
 お休みください。」

 
 「何時も遅いのか?」

  「まあ、こんなものです」

「… そう か。」

「大丈夫ですよ。
 遅くなるときはカワンが迎え
にいったり私が行ったり、
今日みたいに一緒だったり
 あの子は私達にとっては
娘ですから。」


「あ、アハハハな、なにを言う?
 それじゃまるで心配してる
みたいだ、
  アハハ…ハ
 誤解するなよ!
 俺はカワンを待ってるん
だからな!! 」


「あは~は、フウ、勿論、
私もそう思ってますよ。
殿下が琴乃の事が心配じゃ
なくて、ただ、泊まられてる
くらい分かりますよ。
 フウ、分かっておりますとも。」


「ン、コホン、勿論だ。」
外から車の止まる音がして琴乃と
カワンの笑い声がきこえると
ソソクサ止まり慣れたヨンスン
の部屋の隣の客室へと消えた。



「まったくう、素直じゃねーなぁ。
 カワン待ってたなら帰って来
たから居なくなるはずがない。
 琴乃が帰ったから
安心したくせに!! 」

ヨンスンはカワンと琴乃の為に
暖かい紅茶を用意しながら、
クスクス笑った。


次の日、太陽が登る前に
チャンクは、迎えに来た、護衛
数人と車に乗り帰って行った。


朝11時店が混み始める頃
黒塗りの高級車がズラリと
並んだ。

店の狭い駐車場は、堅苦しい
雰囲気に包まれた。
皆さん上等な背広を着られて
きちんとワックスで髪を、
撫でつけて
ペッカペカ

ガチャンと最後に車のドアが開き
黒い生地に赤とか青とかの
繊維が混ざったラフなワイシャッ
に指には金の指輪に
ダイヤモンド、ズラリと
五本の指どこ?みたいな感じ!
な初老な男が降りてきた。

「いらっしゃいませー。」
変わらず明るく接待をこなす。
金持ちも一般市民も分け隔て
無くお客様。
平等!平等!

ブラウンのメガネも高そうな感じ
金持ちオーラを、めいいっぱい出
しながら、野太い声で

「おススメを。」
彼はチラチラ琴乃を見ながら目が
合うと恥ずかしそうにした。

今日のお勧め、シーフードグラタンと揚げたて海老フライ、
野菜タップリ盛り合わせサラダ
とスープを出した。

彼は怖そうな顔をほころばせ
美味しそうに食べている。


店は直ぐ満席になった。

テキパキテキパキと働く琴乃は
まるで太陽のような輝きを
もっていた。

彼は御年68、そうあの国の王
サムソンその人だった。

老いらくの恋程厄介なものはない!

琴乃の笑顔にノックダウンされた
サムソンは全力で琴乃に愛情を
注いできた。

限定100食のお勧めも直ぐ
姿をけした。

 [店主うまかったぞ!また来る…。」
見送りに出たヨンスンに声を掛
けながら琴乃をジッと見た。

琴乃もニッコリ微笑んで
「ありがとうございましたー。」
と返していた。

ずらずらズラーッと並んだ車は
一台また一台と帰って行った。


「ふーっ、68歳になって若い娘を娶りたいとまで思うとは…。」


今まで寄り付く女はたくさんいた
愛だの恋だの、そんなものは
与えられる物だと思っていた。

これが人を好きと思う気持ち
なのか?流れる景色を眺めながら
琴乃の事を愛しく思った
サムソンだった。



その夜、琴乃達が帰りお茶を
飲んでいると黒装束の男達
があらわれた。

狙いは琴乃1人にしぼられた。

ガサッとおとがすると
西洋剣をもち、琴乃目掛けて
突き刺そうとして来た。

咄嗟にカワンが立ち向かう。

「琴乃逃げろ」

ヨンスンの言葉に「ハッ」とする。
キーンキンキーンと剣の
ぶつかる音がする

「カワンさんヨンスンさん
逃げて‼ 私は、いいから、
2人早く逃げて‼」

男達は又標的を琴乃に絞ってきた。

琴乃は、それを確信すると窓を
破って外に出た。

(私が狙いなら此処を出ないと
2人に迷惑がかかる。)

道無き道を走る。
後ろから剣のぶつかる音が消えた。

着の身着のまま、山奥に走り込んだ。

追っ手は、免れているようだ。
もう帰ったら又カワンさんと
ヨンスンさんが危ない。


息を切らしながら山道を歩いた。
真っ暗で何処がどこだか分からない。
随分上まで登って来たのは分かった。街の灯りが随分下の方にみえていたから。


「あ〜なんで狙われるのだろう。
2人は大丈夫だったろうか?
いや、追っ手は、確かに数人いた。 きっと大丈夫。」

....

「しくじったのか?」

「申し訳ありません。
あの店の女只者ではありません。

暗闇ゆえ、追っ手が
追いつかず、なんせ山に
入りましたゆえ。」


「もうよい。
チャンクに脅しをかけただけだ。
奴が動き出さぬ事には
始まらんのだ。」

頭には黒のスカーフで頭を覆い
ぐるりと大きな目玉は異様に
ひかっている。
全身を見ると伊賀の忍者を
思わせる男は立膝をついて
報告していた。

ブロンドの髪を結わえ
立襟の長いグレーコート
を来た彼 は、ブルーの目をした
冷たい 薄ら笑いを浮べ
ピンとはった髭を
なでた。

































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