👑Emperor bride





明日から塔に籠るチャンクと
話す事も沢山あったのに...
あそこで我慢しなかった事を後悔した。


この2人が愛し合っている事は誰が見てもすぐ分かった。
SPも、三人衆もエドワードも何故か胸が傷んだ。

その日
朝早くチャンクは、琴乃の部屋に訪れた。

「すまない、琴乃‼
しっかり食べろ!
琴乃、お前をずっと愛している。
妻を娶っても心は琴乃だけにある‼ お前を一番に大事にする。」


そう呟くと寝たフリしている、琴乃の髪を愛しそうに優しく撫でて、静かに出ていった。


涙が溢れた。
「何よ‼体裁の言い、言い訳並べて...
そんなに上手く行くと思うなよ。...」

琴乃は久しぶりに声を上げて泣いた。
それは昔を思い出される
行為だった。
チャンクと別れたあの日もベットの中で何日も泣いた、迎えに来る
チャンクの言葉を信じて泣いた。

眠れぬ日はチャンクが言った。

「頭撫でてあげるよ。
琴乃が眠るまで撫でてあげる。」

チャンクも、遠いあの日を、思い出していた。
そして琴乃の泣き声が胸にささったまま塔へと登っていった。

琴乃の心が砕け散った事を彼は
知らず、ただただ、国の為に...。

ああ...これでチャンクは本物の
王になる。

国民に認められる王になる。
ルナ姫を娶り妻とする。
本当に嫌と叫べば、やめてくれたの?

「嫌、嫌、嫌よチャンクーー。」

布団を被り、思いっきり叫んだ

「チャンク、私だけのチヤンクで居
て‼」
2号じゃダメなの‼







一週間、2週間、1ヶ月が過ぎた。
チャンクは、世の中と一切の関わりを無くした。


その間琴乃は、カワンや、ヨンスン、ハリー、一家と楽しく過ごした。

チコもマノリラ国を楽しめるように琴乃の行く所行く所、つれ回した一日、一日を大切に生きた。

琴乃の気持ちを察して誰もチャンクの話をしなかった。
あの、お喋りな張蘭でさえ...

それから気持ちが落ち着いて来た。

チャンクに別れだけは、ケジメとして今までの御礼のつもりで、しっかりと伝えようと決心した。


それからは元気が出て、楽しく過ごした。
もう皆に気を使わせるのは
やめよう。

チコを連れ張蘭とハイキングに行ったり散歩したり。
花を摘んだり、ハリーさんの家庭菜園を手伝ったり...
ケーキを焼いたり、やりたい事を
頑張ってやった。
思い残す事が無いように。

チャンクが籠った3ヶ月は日めくりカレンダーをパッパッと剥ぐようにアッとゆう間に過ぎて行った。

「楽しかったな。」

カワンさんは気づいていたようだ。
琴乃が去る日
「琴乃、幸せになるんだよ。
あんたは私らの娘なのだから
幸せを祈っているよ。
たまにはマノリラ国へ帰っておいで..
辛いだろう。
可哀想に...。」

両手で頬を撫でて辛い目を向けて来る。
この2人は身を投げ出して私を助けてくれた。何回も助けられた。

「何も、恩返し出来ず、すみません。」


言葉に詰まりそうになりながらも
感謝を伝えずには居られない。

「琴乃、元気で暮らしなさいね。
無理は駄目だよ。」

隣でヨンスンさんも涙を流していた。
琴乃は、シッカリと頷いて

「大変お世話になり..ま..した。
御恩は忘れません。 `」

泣き顔は、見せない。
涙を力いっぱい止めてバスに乗った。

ウルウルした目からツーーーっと
頬を伝う涙を止めるのがやっとだ。
泣き顔だけは、見せちゃ駄目だ‼
2人を悲しませたくない。
元気に出て行くはずだったのに...
歯を食いしばった。

「おとうさーん
おかあさーん

ズーグスツグスッ

ありがとう、さよならーー。
元気でねーーバイバイーー。」
窓を開け大きな声で叫んだ。

琴乃は初めて2人を父、母と呼んだずっと、此方の世界の親だと
思って来た。

ハッとして、
手を振り追いかけて来る2人を
振り返った時ポロッポロ、ポロッポロ涙落ちて止まらなかった。
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