星空の下、君に恋をして。
「…っ!」

屈託のない綺麗な笑顔に目を奪われる。

この子は、世の中の暗さを知らないかのようだと思った。

「…どうかし、ましたか?」

あまり敬語に慣れていないのか、少し不自然な話し方に、私は頬を緩めた。

「なんでもないよ。こちらこそ、よろしくね、紅星くん。それから、敬語使わなくてもいいよ。」

敬語とタメ口が混ざっていることを指摘すると、紅星くんは少し恥ずかしそうに笑った。

「ありがとう。僕のことは実里でいいよ。まだ会ったばかりだけど、センパイになら呼ばれても大丈夫な気がするんだ。」

「…え?大丈夫っ、て?」

疑問をそのまま口に出しても、実里くんは少し笑みを深めるだけだった。

…聞いて欲しくないこともあるよね。

私はそう思い、一言だけ返事をした。

「実里くん、よろしくね。」

実里くんはこくんと頷いた。

「先輩達まだかな?」

「楓菜と寧々ちゃんは係の仕事があるって言ってたよ。もうちょっとで来るんじゃないかな?」

「あ、そうなんだ。桜夜センパイはA組だから立岡先輩と桜葉先輩と同じクラスなんだね。」

納得したように頷く実里くんに私が頷き返したとき、とんとん、と扉がノックされた。



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