星空の下、君に恋をして。
「私が、何?」

微妙なところで区切られた言葉の続きを促すと、実里くんは小さく首を振った。

「何でもない。でも、桜夜センパイにはここに入ってもらいたいと思ってる。本当だよ。」

純粋で綺麗な瞳を見れば、実里くんが本当にそう思っていることはよく分かる。

「うん、分かった。でも、ほかの部活も見てみたいの。それでも、軽音部に戻ってくるかもしれないから待ってて?」

少し言葉を選んでそう言うと、実里くんは目をぱちぱちとさせてから言った。

「桜夜センパイはずるいね。」

「な、何で?」

「そんなこと言われたら、待つ以外に無くなっちゃうからさ。僕がどんなにセンパイを引き止めたくても、見送らなきゃいけないって思った。」

ふわっとした優しい雰囲気は、ただ綺麗なだけじゃなかった。

世の中の暗いところまで知っていた上で出せる純粋さ。

私と、この子は、同じかもしれない。

勝手に自分の過去と実里くんを重ね合わせていたことに気付いて、私は苦笑いした。

「ありがとう。じゃあ、行ってくるね。」

「いってらっしゃい。待ってるからね。」

寧々ちゃんと実里くんに今度こそ見送られて、私は部屋を出た。
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