三月の向日葵
月一の検査は嫌になる。
こんな大きな機械に包まれて、
あちこち調べられるんだもの。
そして決まって言われるのが、
「あまりよくありません」だった。
そう言われるたびに親が泣く。
それを見るのが嫌だった。
検査が一通り終わり、病室に戻る時、
中庭に少年の姿はなかった。
夢でも見ていたのかというくらい不思議な気分になる。
それでも特に気にすることもなく、
エレベーターに乗って三階にある自分の病室に戻った。
私の病室は個室。
大部屋でも良かったんだけど、
お父さんが頑なに個室にと言ってきかなかった。
大部屋だったら今頃いろんな人と仲良くなれて、
暇な入院生活もちょっとは楽しくなったのに。
ベッドに乗ってノートを取り出した。
鉛筆を動かして時を止める。
こうして絵を描いている時は全ての時が止まり、
自分だけの世界に行ってしまえる。
それだけが唯一の楽しみだった。
ただひたすらに手を動かす。
出来上がったのはさっき中庭で見た男の子だった。
綺麗な顔立ちの子だったと思う。
愁いを帯びていて、どこか寂しそうなそんな横顔だった。
とにかく彼はとても絵になる人だった。
パタンとノートを閉じて息をつく。
天井を仰ぎ見た。
あの子も病気なのかな。
まあ、何にせよ私より不幸な子はそうそういない。
きっとあの子もすぐに退院していくだろう。
そう思うとなんだか面白くなくて、
更に卑屈になってしまう。
どうせ私は死ぬよ。ずっとここで一人、
寂しく死んでいくんだ。
あっけない終わりが目に見えている。
私の人生、本当につまらないものだった!
と嘆いていると、コンコンとノックが響いた。