輪舞曲-黒と白のcaprice-
Overture


鼻孔を突き抜ける、消える事のない硝煙のフレグランスに身を包み。
血を血で流す生臭い夜に一歩足を踏み入れる。
今宵も繰り広げられる
生と死を背後に、狂宴のワルツを。

静寂と黒が共存するこの世界には充分すぎる重厚のある拳銃のバックミュージック。
ここは人一人いない、寝静まった街。艶やかでいて煌びやかな前の都=ミッドナイト・タウンとは程遠い寂れた街の夜は闇と同化しやすく、気づく頃には漆黒に呑み込まれている。
そんな黒猫さえも寄り付かない裏の路地に、黒と闇を身に纏った人間が2人。
それだけでも、異彩を放っている事だろう。

一歩歩くと一歩進み、一歩止まると一歩下がる。
そんな調子で付かず離れずと決め込んでいるのか、近くなっては遠ざかる気配に“後を付けられている”という事実は自身の思い過ごしでは無いことを知らせる。
背後から感じる殺気を隠さぬ者の気配。それに気付かない程落ちぶれた覚えはなくて、けれど気付かない振りを徹する。

「(…一体誰の差し金?)」

おそらく、その正体は俺の命を奪いに来た雇われ暗殺者であろう。撒こうと思えば難しくはない事だろう、しかし何を意図としているのか、はたまた誰に雇われているのか。見抜けぬうちはどうにもこうにも手出しは出来ない。
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