輪舞曲-黒と白のcaprice-

言葉とは裏腹に、氷のような瞳、変わらない冷笑を浮かべる少女の表情からは大した驚きなど見せてはいなかった。(取り繕っているに過ぎないのだろうけど)何の気なしに自分の掌に視線を送ってみる。
可笑しい話だ。(この状況からして何が可笑しいのか否か考える方が不粋なのだろうが)。

『(…ははは。笑えない。透けてる、なんて…。まさか本当にこんな事が起こるとは)』

それまで無言劇を拡げていた少女は小さく呟いた。よくよく見ると、少女に与えた損傷は甚大のようだ。体内に弾丸は残されていないようだけど、血流の流れは些か景気が良さそうだ。
二の腕・足首・大腿骨付近に巻いたばかりの包帯からはじわりと血が滲んでいる。
頬にもやや掠り傷が目立つ。自ら与えた損傷であるに関わらず、この見ず知らずの暗殺者の満身創痍に少しばかり胸を痛め罪悪を感じる。

「どこでこの場所の存在を知ったの。あんたもしかして、最初からあたしの事を知っていたの?」

そんな事はお構い無しだ、と云うように顔色ひとつ変えず問う。

『…君の事は何も知らないよ。気付いたらここに…。ねえ、君は霊的な物を信じれる性質?』
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