輪舞曲-黒と白のcaprice-

『こんな事になってから会話を交わすなんて、可笑しい話だろうけど。とりあえずは自己紹介させてもらうね』

少女は書類か何かで俺の事を調べ上げているからそんな必要性なんてないのだろうけど。

「…あたしはユリア。あんたが言う通り、雇われた殺し屋よ」

予想に反して、少女…ユリアから口火を切ってすらすらと名を告げる。視線は勿論合わせず、ひたすら負った傷の治癒に専念していたのだけれども。

『ユリアね。初めまして。君はもう知っているだろうけど、俺はアサギ。
とりあえず君と同じ同業者だ。まあ、世間には知られていない方の事を任されていたけどね』

少し目を見開き彼は包帯を巻く腕を止めて対峙するかのようにようやく俺に目線を合わせて静かに口を開いた。

「…世間にはって…、もしかして政府…御上の専属だったの?」

『…まあ。そういう事になるね。君は知らない?夜を支配する…“夜の統治者”の噂』

いつの間にか名付けられていたもうひとつの通り名。通り名を口にするだけで、人々は震え上がり罪人は慄き命乞いをしていたという影の逸話。この世界に身を置く者で在らば、知らぬ者は誰一人としていない筈なのだけれど。
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