輪舞曲-黒と白のcaprice-
「…知らない。噂話なんて興味ないし、自分の眼で見たものしか信じない性質だから」
表情ひとつ変えずに言い切る姿から見て、本当に少女は俺の存在を知らないのだろう。このような者がまだ存在していたのか。
『…成程ね。だから護身銃やら発光弾だなんて使用したんだね。随分甘く思われていたのは気のせいではなかった』
「これは依頼者からのリクエスト。発光弾使って目眩ましして背後を狙え…って。
あたしはそんな小細工使わないで普通に弾丸戦に持ち込みたかったけどね」
淡々と暴露を重ねる少女だが、情報を与えて“やっている”と云わんばかりの口調。微々たる情報を口にしても大した痛みも痒みもないのだろう。
『…ねえ、君はこの仕事は一人で行っているの?目的はなに?』
確かにこの世界に身を置く以上、誰かに恨み妬まれるのは当然の事。しかし俺は云わば“影の執行人”。この任に就いたあの日以来表舞台に立つこともなければ人に姿を見られた事などない。(自ら人と距離を置いて生きてきたし)俺の正体を知っているのは、本当に数少ない人間だけだ。