輪舞曲-黒と白のcaprice-
…なんて。そんなものは建前に過ぎず、無意味に人を傷付ける真似事は出来る事ならばしたくはない。
「(…俺が直接手を下してしまうと…どうなるかわからないしね)」
その距離 僅か数メートル。
微妙な距離を保ちながら俺の寝首を狩ろうと、千載一遇の機会を狙おうとする魂胆が丸裸だ。
消えない殺気と諦めそうにもない闘気。
これだけの長時間、根気が継続されているという事実だけは褒め称えるべき価値はあるだろう。
う。
気付かれないようにゆっくりと目線を、背後に映す。正確には手元、腰元に装備されているであろう武器の確認。
「(…随分と俺も結構甘くみられてしまっているようだ)」
持ち得ていたのは、女性が装備しやすいとされている小型の護身銃。
腰元には何も装備されていない様子だ。
「(…ビギナーか?そんな市民が扱うような護身用の小型銃では、俺を倒す事は叶わないぞ)」
思わず笑いが零れてしまう。過信している力を打ち砕き思い知らせる事もある種の一計かもしれない。すればこのような闇討ちなど、闇の世界から手を引くかもしれない。
そんな考えと共に腕は自然と懐に隠した32口径の小型銃のリボルバーに指を掛け静かに振り向く。