輪舞曲-黒と白のcaprice-

腰を抱く手をぴしゃりと叩き遠回しの男の誘いをなぎ払い、少しばかりの忠告を突き付け看護婦は男に背を向けその場を後にする。
「じゃあね」とひらひらと手を振りながら。

「…おーぅ。いいねえ。
けど気が強い女はなかなか好かれねぇぞーっ。
まあ、俺はああゆう女のプライドとか芯を粉々に砕き壊して調教して自分好みに仕立てるのが嗜好だったりするけどね。
さて、202号室か。まだ姫様は寝てるかなー?」

そんな、軽口を叩いて指示された部屋へ向かう。勿論深紅の薔薇を抱えながら。
示唆された部屋に一歩足を踏み入れると、白いカーテンが風に靡き、穏やかな陽光が部屋に射し込み今日と云う日が小春日和と呼ばれるものだと安易に直結出来る。
こじんまりとした部屋に唯一置かれている白いベットには、静かに寝息をたてる金髪の少女…ユリアの姿。
その寝姿はまさに眠り姫のようで、寝息で上下に肩を動かす以外一切微動だにせず固く瞑られた瞳。
痛々しく各所に包帯と絆創膏で治癒に当たっている。か細い腕には、これまた細いチューブがつけられておりその先は点滴に繋がっていた。
ふわりと風が彼の髪を揺らしていても起き上がる気配は一切見られない。
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