輪舞曲-黒と白のcaprice-
「…気配を消したら気付かれないと思ったのかしら。誰かは知らないけれど残念ね。あたしの根首を取ろうなんざ100年早い…って!ボス!?」
自身に奇襲をかけようとしたと彼女は思い込んでた命知らずの愚者…相手の顔を一目見てやろうという気が起きたのか、トリガーを引きつつ相手に視線を向けると見知った顔。
ユリアが相手に気付いて油断した隙を狙い、彼女が持つ拳銃を男は目にも止まらぬ速さでそれを払い奪いとる。それを叩きつけるようにして投げ、ユリアの位置から後方にある壁にめり込ませる。
パラパラと崩れる壁の塗装とコンクリートの残骸。そしてめり込んで最早使い物にはならないであろう自身の愛銃。
瞬時の事で硬直したままのユリアを差し置いて男は満面な笑みを浮かべていた。
「お見事だよユリアちゃーん。
相変わらずいい腕してるね、変わり無さそうで安心したよ。あ、あれお土産ね」
「…」
呆気にとられるユリアをさておき、先程無理矢理花瓶にねじ入れた深紅の薔薇の所在を知らせる。